An Analysis of the Relation between Stress Coping Profile and Job Stress Using Structural Equation Modeling (SEM)

Abstract
ストレスコーピング特性と職業性ストレス―共分散構造分析による解析―:高屋正敏ほか.株式会社日立製作所日立横浜病院神奈川健康管理センタ―目的:どのようなコーピング特性を用いれば職業性ストレスから引き起こされるストレス反応を軽減できるかを明らかにするために今回の検討を行った. 方法:職業性ストレス簡易調査票とコーピング特性簡易尺度質問票(BSCP)を使用し1,319名の男性製造業労働者を対象とした.探索的因子分析(Exploratory factor analysis: EFA),検証的因子分析(Confirmatory factor analysis: CFA)および共分散構造分析(Structural Equation Modeling: SEM)を統計的検討に用いた.結果:EFAではコーピング特性および職業性ストレス関して6つの因子が抽出された.コーピングに関する3因子は問題焦点型対処,情動焦点型(積極的)対処と回避逃避型対処と対応し,職業性ストレスに関する3因子は仕事負担感,よい人間関係とストレス反応に対応すると考えられた.さらにこれらの因子はCFAにより良い適合度(GFI=0.947,AGFI=0.915,RMSEA=0.070)を示した.コーピング特性が自覚的に感じている対人関係や仕事負担感に影響し,続いてこれらのストレス要因がストレス反応を引き起こすというパスを構築した.共分散構造分析により,このパス図はGFI=0.937,AGFI=0.904,RMSEA=0.074と良い適合度を示した.パス図から積極的な情動焦点型対処は仕事負担感,人間関係どちらもストレス反応軽減する方向に働き,この対処は最終的にストレス反応を軽減する(標準化推定総合効果-0.205).逆に回避逃避的対処は仕事負担感を高め人間関係にも悪影響を及ぼし,両因子を介してストレス反応を著しく高める(標準化推定総合効果+0.160)と考えられた.問題焦点型対処は仕事負担感を増やすが,よい人間関係をつくる.これらの要素からだけでは,最終的なストレス反応はわずかに増加するだけであった(標準化推定総合効果+0.019).しかし,各コーピング特性間には相関が存在し,問題焦点型対処はストレス反応軽減させる情動焦点型(積極的)対処と正,ストレス反応を増強する回避逃避型対処と負の相関がある.問題焦点型対処する傾向のある人は同時にストレス反応軽減する他の対処法を取ることが多いと考えられるため,問題焦点型対処する人はコーピング特性間の相関を加味すると最終的にストレス反応は軽減している人が多いと考えられた. 結語:積極的な情動焦点型対処は職業性ストレスから引き起こされるストレス反応を軽減し,回避逃避的対処は高めると考えられた.従来ストレス反応を軽減すると報告されることが多かった問題焦点型対処は,コストとして仕事の負担感の増加を伴うことから最終的にストレス反応はわずかに増加した. (産衛誌2010; 52: 209-215)