Chemical Modifications of αs- and κ-Caseins

Abstract
αS-カゼインおよびκ-カゼインの特定の官能基がCa2+との作用や両蛋白間の相互作用およびミセル形成において特別な役割を果しているかどうかを究明するために,チロシン残基のニトロ化を中心に,リジン残基のTNP化,アルギニン残基をグリオキザールで修飾することにより検討した. αS-カゼインのCa2+による凝固沈澱にはその前段階として会合が必須の過程であることを知った.ニトロ化によるチロシン残基のpKの変化と凝固沈澱能との関係ならびに440mμ付近におけるニトロチロシン残基の吸収スペクトルの検討から次のことが示唆された.すなわち, Ca2+がαS-カぜインに結合することによって誘導されるチロシン残基のαS-カゼイン分子間水素結合が凝固沈澱に重要な役割を果している.凝固沈澱能の低下するような条件においてニトロαS-カゼインはミセル形成にも寄与しにくくなるので, Ca2+による凝固はミセル形成に必須の反応といえる. Ca2+の存在しない場でのαS-カゼインとκ-カゼインとのcomplex形成にはαS-カゼインのチロシン残基は関与せず,κ-カゼインのチロシン残基が関与していることを認めた.αS-カゼインとcomplexを形成しえないニトロκ-カゼインはミセル安定化能も失った.したがってαS-カゼインとκ-カゼインのcomplex形成もミセル形成に必要な過程と考えられる. アルギニンを修飾した場合にはαS-カゼインのCa2+による凝固性,κ-カゼインのαS-カゼインとのcomplex形成能およびミセル安定化能の低下が認められた.