Study on Usefulness of Cardio-thoracic Ratio in the Aged

Abstract
老人ホームに居住する60歳以上の老年者のうち, 心筋硬塞, 心臓弁膜症, 脳卒中後遺症を除く1671名 (男617, 女1054) の心胸廓係数 (CTR) を70mm間接・写真により計測し, 他の臨床的指標との関連を検討した. CTRはいずれの年代においても男より女に有意に大であった. 加齢に伴う増大傾向を男女に認め,女では有意であった.1) 男女で, 高血圧とCTRの間に有意な関係を認めた.2) 肥満度の上昇によりCTRは有意に大となった.3) 女では, ヘマトクリット値が大きくなるとCTRは小になり, 男では関係が無かった.4) 心電図上のQRS左軸偏位, T波異常は, 男女でCTRの大なる老に高率であった. 左側高電位差は男にのみCTRと正の関係があり, 女には一定の関連が無かった. 心房細動はCTRの大なる者に多く, 右脚ブロックは一定しなかった.5) 心筋硬塞, 脳硬塞, 脳出血は各れもCTRの大なる者より高頻度に発生したが, 推計学的には有意でなかった.肥満は, CTRを大ならしめる修飾因子の一つであるが, 経年に伴い, 男の肥満度は不変, 女の肥満度は低下する. 加齢によるCTRの増加は心拡大を意味することになる. 血圧は加齢と共に, 収縮期血圧は上昇, 拡張期血圧は下降し, 男女に顕著な差を認めない. 女により極立っている経年変化は, 貧血の影響によると考えられる. 男女で加齢によるヘマトクリット値の低下があるが, 貧血は女のCTRに敏感に反映した. 女にみられたCTRと心電図における電位差の不一致は肥満度の大なることに帰因すると考えられる.