Birth, Growth, and Future Issue in Learning Sciences:

Abstract
本稿では,学習科学の成立と展開を振り返り,次の課題を同定することで,実践を支える学びの科学になり得る可能性を検討した。1990年代初頭の成立から30年が経ち,学習科学は学習者の学びの複雑さや多様性を可視化し,それを支える教師や教育行政関係者,研究者が実践の中で学びについて学び合うことの重要性を明らかにしつつある。それは研究方法論が,特定の学習理論を具現化した教材などのパッケージを提供するデザイン研究から,ビジョンを提示し,その実装を現場主体で行えるようシステム面で支援するデザイン研究や,教育行政関係者も巻き込んだ連携基盤の上で学校や教師集団の自走を狙うデザイン社会実装研究に変化しつつあることとも呼応する。今後は,児童生徒が授業の中でいかに学ぶかの仮説を教育現場が自ら立てて,そのデザイン仮説を実践結果で検証し,学習プロセスの複雑さや多様性についての理解を深めることを支えられる実践学の創成が求められている。