Abstract
涙嚢鼻腔吻合術 (DCR) は眼科との境界領域であるが, 鼻内内視鏡機器の発達もあり DCR 鼻内法で耳鼻咽喉科医が携わる術式の一つとなっている. 開放した涙嚢腔が再閉塞により, 成功率100%とする報告はまれであり, 術式に一定の工夫を用いる報告なども散見される. われわれも再閉塞の症例を経験したことで, 術式の工夫が必要と考え, フィブリン糊を用いた DCR (FibDCR) を検討した. 今回の研究は, JCHO 仙台病院倫理委員会の承認 (2018-4号) を得た2018年4月を境とし, 対象を2群に分けた. すなわち, 倫理委員会申請前の期間である2017年1月~2018年3月に施行したフィブリン糊を使用しない DCR 従来法群122側と, 倫理委員会申請後の2018年4月~2018年12月に施行した FibDCR 法群119側とに分け, その治療効果を2019年12月まで比較検討した. FibDCR 法群の有効率は術後6カ月で99.2%, 術後1年で99.1%であった. 一方, 従来法群は術後6カ月で96.7%, 術後1年で96.5%であり, 統計学的有意差は認めないが FibDCR 法群の方が2.5~2.6%高い有効率であった. 術後1年の鼻内内視鏡スコアリングにおいては, 従来法群に比べ FibDCR 法群では広く開放維持されている (Grade4) 割合が有意に高かった. 以上より FibDCR 法の有用性および安定性を確認した.