Abstract
1993から2018年までの26年間に当科で診療した上肢深部静脈血栓症20例を対象に臨床的検討を加えた.男性11例,女性9例,年齢は16~90歳,中央値50歳,患肢は右9例,左11例であった.上肢の過剰な運動が誘因のPaget-Schroetter症候群が最も多く7例であった.悪性疾患が誘因となったものは5例で高齢者に多い傾向がある.発症初期の11例に対してヘパリンとウロキナーゼの静注による治療を行い抗凝固薬の内服治療へ変更した.このうちカテーテル的血栓溶解療法を行ったのは6例で残り5例は点滴静注とした.他の5例はヘパリンのみ使用し抗凝固薬の内服治療へ変更した.発症から相当日数が経過しているなどの理由で4例は無治療となった.症状が改善したものは10例,不変6例であった.他の4例はいずれも悪性腫瘍進行により死亡した.肺塞栓症を合併したものはなかった.上肢深部静脈血栓症はまれだがとくに片側の上肢腫脹が出現した場合は鑑別疾患として念頭において診療に当たる必要がある.