Preventive Innominate Artery Transection for a High-Risk Case of Tracheo-Innominate Artery Fistula

Abstract
症例は18歳男性.2年前に低酸素脳症のため気管切開術,胃瘻造設術が施行された.2カ月前から気管切開孔から繰り返す出血を認めた.気管内視鏡検査で出血源を認めず,側弯を呈する重症心身障害児であること,造影CT検査で気管前面と腕頭動脈が接していること,腕頭動脈と気管の交差部位と気管カニューレ先端位置が一致していることから気管腕頭動脈瘻のハイリスク症例として予防的腕頭動脈離断術の適応と判断された.手術は術前CT, MRI検査による綿密な解剖学的評価のもと,胸骨切開を要さない胸骨上アプローチによる腕頭動脈離断術を施行した.腕頭動脈の血行再建は,左内頸動脈,左椎骨動脈優位の頭蓋内血流分布であったこと,術中脳内局所酸素飽和度の低下を認めなかったことから施行しなかった.術後の神経学的合併症を認めず,気管切開孔からの出血は消失した.造影CTで右内頸動脈および中大脳動脈の良好な描出を確認,第9病日に退院した.気管腕頭動脈瘻は致死的であり発症予防が重要であるが,予防的腕頭動脈離断術に関する一定の見解はない.重症心身障害児における胸骨上アプローチによる予防的腕頭動脈は治療選択肢の1つと考えられ,文献的考察を踏まえ報告する.