Pharmacological and clinical study results of trastuzumab deruxtecan (T-DXd, ENHERTU®)

Abstract
特異的な分子を発現するがん細胞を標的とするモノクローナル抗体に,リンカーを介して殺細胞活性を有する薬物を結合させた抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)は,選択的かつ効果的にがん細胞を死滅させると共に,全身毒性の軽減も期待できる次世代抗体医薬品である.しかしながら,ADC技術開発には有効性,安全性,物性面等,未だ改良の余地が多く残されており,より多くのがん種に適用でき,かつ,より強力な治療効果を示すADCの創製が期待されている.第一三共では2015年より,DNA topoisomerase I阻害薬エキサテカンの誘導体を薬物部分に適用した独自の薬物リンカー技術を有するHER2 ADCであるトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)注(略称:T-DXd,商品名:エンハーツ®点滴静注用100 mg)の臨床開発を,世界に先駆けて本邦で開始した.T-DXdは第Ⅰ相試験の有望な結果に基づきグローバル開発を加速化し,第Ⅱ相試験にて標準的治療が存在しない三次治療以降のHER2陽性乳がん患者に対し,既存の薬剤にはない高く持続性のある抗腫瘍効果が示された.その結果,医薬品条件付き早期承認制度を活用し,乳がんで初めて第Ⅱ相単群試験結果に基づき製造販売承認を取得できた.さらに,胃がんでも先駆け審査指定制度を活用し,第Ⅱ相比較試験の結果により世界に先駆けて本邦で国内製造販売承認事項一部変更承認を取得した.また,初回適応より前の治療ラインや,これまでの抗HER2薬が適応を有していない適応(HER2低発現乳がん,非小細胞肺がん,大腸がん)にも拡大し,さらに既存の有望な薬剤と組み合わせた際の臨床効果も確認中である.今後,T-DXdの効能・効果を拡大することによって,多くの患者さんがベネフィットを享受できるよう開発をさらに加速していく予定である.

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