「慢性膵炎臨床診断基準2019」の背景と概要

Abstract
現行の「慢性膵炎臨床診断基準2009」が提唱されてから10年間が経過した.世界ではじめて早期慢性膵炎の概念を取り入れた診断基準であるが,その後蓄積された知見や膵炎診療の変化をふまえて,その改訂が必要となっていた.今回,日本膵臓学会膵炎調査研究委員会慢性膵炎分科会が中心となり,診断基準の改訂を行った.新基準「慢性膵炎臨床診断基準2019」の最大の特徴は,mechanistic definitionを慢性膵炎の概念として取り入れ,早期慢性膵炎の診断項目を危険因子の観点から改訂したことである.新たに膵炎関連遺伝子異常と急性膵炎の既往を診断項目に組み入れ,診断特異度の向上を意図した.さらに,多量飲酒歴の基準を純エタノール換算80g/日から60g/日に変更するとともに,画像診断としてMRCP所見の格上げ,早期慢性膵炎の画像所見の整理を行った.新しい診断基準が慢性膵炎診療のさらなる質の向上や患者の予後改善に寄与することが期待される.