Abstract
現在,腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)は外科的人工血管置換術(OSR)とともに標準治療となっており,本邦でも腹部大動脈瘤手術の半数以上にEVARが施行されるようになった.EVARはその低侵襲性からOSRと比較して短期成績の優位性は明らかであるが,長期成績に関しては追加治療を中心に解決すべき問題は多々ある.日本ではEVARとOSRの成績を直接比較するランダム化比較試験(RCT)は行われていないが,欧米ではいくつかのRCTからEVARの長期成績はOSRと比べて必ずしも良好ではないことが明らかとなってきた.ステントグラフトデバイスのさらなる改良と技術的進歩により,EVARの長期成績の向上が期待されるが,EVARの低侵襲性の恩恵を継続させるためには,生涯にわたる綿密なフォローと適切な追加治療介入とともに,デバイスと治療手技の進化を引き続き追求していくことが肝要である.