Abstract
本研究では,ジグソー法を用いた性教育指導観の理解を目指した授業の学習効果を検討することを目的とし,2018年,2019年の7月,首都圏A私立大学の2ヶ年分の受講者282名を対象に,授業の前後で質問紙調査を実施した。性教育指導観の変化を検討するため,(1)「性」に対するイメージ,(2)性教育をする理由,(3)性教育による児童生徒の具体的な変化についてKH Coderを用いて分析した。その結果,授業の前後で質問紙に記述された語(恥ずかしい,違い,知識,大人,性など)の共起関係が変わった,つまり同じ単語が異なる文脈の中で用いられるようになった。このことから,学生らに性や性教育に対する捉え方に変化が起こり,学習者から指導者へと認識の変化があったと推察された。また,ジグソー法で課題に取り組む協働の過程の中で,学生は主体的に他者と対話することで学習したと推測できた。つまり,文献の内容をグループのメンバーが個々に理解したというより,対話によってグループでの共同理解に努めたということになる。ジグソー法によって性に関しての学びを頭の中に主知的に構築するのではなく,他者との対話の中でパフォーマティブに意味を構築していたことが推測された。