Abstract
症例は52歳男性.呼吸困難を主訴に救急搬送された.精査の結果,高血圧性心不全の診断で緊急入院となった.入院時のCTで上腸間膜動脈分岐部直上の腹部大動脈に石灰化を伴う高度狭窄を認め,異型大動脈縮窄症と診断した.入院後,降圧管理を含む薬物治療で心不全は改善したものの,急性腎機能障害を認めた.大動脈縮窄と降圧による腎血流低下が原因と判断し,大動脈狭窄部に対する血管内治療を施行した.血管内治療では大腿動脈よりアプローチし,大動脈狭窄部に自己拡張型ステントを留置した.術後経過良好にて術後3日目に退院となった.その後外来にて降圧薬も完全に離脱し,心機能も改善した.本邦では異型大動脈縮窄症に対して各種バイパス術による治療が多く報告されているが,血管内治療による治療例の報告はまだ少ない.海外においては血管内治療例がすでに多く報告されており,本邦においても治療選択肢の1つとして考慮されるべきである.