Abstract
目 的:本研究は,精神保健活動の保健師の家庭訪問スキルを向上させるための新たなケースシートを考案し,それを用いた事例検討会を行い,その効果を検討することを目的とした. 方 法:家庭訪問スキルを「アセスメント項目」と「家庭訪問後の評価項目」に分けて構成したケースシートを用いて事例検討会を実施した.事例検討会は2014年度に実施した2事例すべて(計4回)を分析対象とした.すべての事例検討会に参加した保健師を分析対象者とし,事例検討会の開始前,終了後に調査票による評価を依頼した.6因子36項目からなる「精神保健活動における保健師の家庭訪問スキル」を用いて,スキルの習得状況を4段階(1~4点)で評価した.総スキル得点と6因子からなる各因子のスキル得点により分析した. 結 果:総スキル得点は,各事例検討会の実施により,すべての事例検討会で有意に向上し(p<0.05),事例検討会全体の開始前と終了後では13.0点上昇した(p<0.05).6因子のスキル得点では,「ニーズを見極める」スキル得点,「家族関係をとらえる」スキル得点が有意に向上した(p<0.05).また,有意差はなかったが,「家庭訪問を管理する」等の4つの因子スキル得点においても上昇傾向がみられた.事例1と事例2において総スキル得点は,事例検討会1回目も2回目も同様に有意に上昇しており,事例検討会2回目は事例の経過報告と事例検討を行なうことで,新たな事例を提供する事例検討会1回目と同様の効果が得られた. 結 論:ケースシートを用いることで,全ての事例検討会において家庭訪問スキルを向上させる効果が認められた.「ニーズを見極める」スキル得点,「家族関係をとらえる」スキル得点を上昇させる効果が示された.家庭訪問スキルを効率的に向上させるにはケースシートを用いて,1事例につき事例検討会を2回実施する方法が効果的であった.

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