Abstract
本稿では,2019年7月から2020年6月までの1年間に『教育心理学研究』に掲載された29編のうち,有意性検定を用いた研究論文のサンプルサイズ設計に関する記述状況について概観した。その際,『心理学研究』,Japanese Psychological Research (JPR),Journal of Personality and Social Psychology (JPSP)のそれと比較し論じた。研究のサンプルサイズの根拠について何らかの記述がみられた論文の割合はJPSPが最も高く(93%),他の3誌(7―15%)の約8倍であった。また,検定力分析と同様,統計改革の柱である効果量や信頼区間が分析結果に併記されているかを調べたところ,概して4誌ともサンプルサイズ設計の記載より実践度は高く,JPSPでは対象論文全てにいずれかの記載がみられた。一方,『教育心理学研究』では効果量,信頼区間のいずれも記載がない論文が全体の44%を占め,実践度が最も低かった。最後に,『教育心理学研究』における統計改革の促進について,特にサンプルサイズ設計の実践の促進に向けた方策について筆者なりの見解を述べた。