反芻動物の着床期における細胞外分泌小胞エクソソームの役割と展望

Abstract
反芻動物において,胚が子宮内膜に着床するためには,胚と子宮内膜の緊密なコミュニケーションが必要である.近年,子宮腔内に存在するエクソソームをはじめとした細胞外分泌小胞(EVs)が,着床過程における胚と子宮内膜間の新たなコミュニケーションツールになり得る知見が蓄積されてきた.EVsは,タンパク質,DNA, RNAs, 脂質などの因子を内包し,子宮腔内にて,細胞増殖,遊走能,接着などの生体内の機能を調節しているとされている.また,EVsは,着床過程において,卵巣から分泌されるプロゲステロン(P4)や胚栄養膜細胞から分泌されるインターフェロン・タウ(IFNT)と協調し,胚接着を制御している.さらに,近年の急速なEVsに関する技術発展に伴う基礎研究や応用研究の成果から,EVsを用いた妊娠鑑定剤,妊娠促進剤などの生産現場でも使用できる技術が確立できれば,早期胚死滅を防ぎ,わが国の受胎率向上に貢献できる.